濱田諭のブログ

2018/11/02

宅建業者向けセミナー(2018.10.24)の第2講座の補足その2

浜田です。引き続き第2講座で取り上げた事例の補足等です。

ここでは事例2について取り上げます。

事例2「仲介業者Xは、買主Y2に対し、売主Y1所有の本件土地の建ぺい率が400%、容積率が100%であるが他に制限はなくY2が希望するどのような建物でも建築できる旨を説明し、Xの仲介によりY1とY2間の本件土地の売買契約が成立した。

その後、本件土地の道路側の擁壁に亀裂があるため擁壁を作り直すか、道路より45度の斜面の後方でなければ建物を建てることが許可されないことが判明した。 擁壁工事には約2,000〜3000万の費用がかかること、45度の斜面後方では10坪程度の建物しか建たないことが判明した。

 Y2はY1との売買契約を解除し、その後の協議交渉の結果、Y1が費用の一部を負担し、当初の代金を減額して売買契約を締結し直した。XはYら(Y1及びY2)に媒介報酬を請求した。Xの請求は通るか?その理由は?」

事例2は問題のある媒介行為と媒介報酬というテーマを説明するための事例です。

題材となっているのは東京地裁昭和57年2月22日判決、判例タイムズ482号112頁 になります。

この事例は宅地建物取引士の講習テキスト(公益財団法人 不動産流通推進センター)の224頁でも取り上げられているものです。

 しかし、そこでは「媒介業者の責任で契約解除された場合、報酬請求権は発生しない」といの結論のみしか記載されておらず、少し突っ込んで話をしてみようと思った次第です。

宅建業者の媒介報酬の発生要件として

1.仲介業者と委託者との仲介契約の締結

2.仲介業者による仲介行為の存在

 3.委託者と相手方との売買契約の成立

4.仲介業者の仲介行為と売買契約成立との間の相当因果関係 が必要とされています。

 本件では1〜3を満たすのではないかと思われます。なお3については最初の売買契約を指します。

しかし4の要件を満たすかどうかが問題です。

 売買契約の解除と媒介報酬については

.ーリングオフ(業法37条の2)の場合には前述の3及び4を欠くので報酬が発生しない。

 解除条件付き売買の場合(ローン特約条項付きの場合のローン不成立で解除条件が成就した場合)には前述の3及び4を欠くので報酬が発生しない

手付解除の場合には  基本的には報酬は発生する(既払いの報酬の返還義務はない)とされていますが、標準媒介契約約款を使っていないケースで報酬額を商法512条に基づいて算定したという事例があります(福岡高裁那覇支部 平成15年12月25日判決)

 ず通撹塒行解除の場合ですが 報酬は発生(既払いの報酬の返還義務はない)とされていて、その理由は売買契約における債務の履行は契約当事者の責任であり、媒介業者の責任ではないからとされています。

 ニ楫錣里茲Δ聞膂娉鮟の場合にも報酬発生(既払いの報酬の返還義務はない)というのが原則ですが、媒介契約は民法上の準委任契約であり、善良なる管理者の注意をもって媒介事務を処理する義務があります(民法656条、同法644条)。

本件のような調査不足、説明不足が業者にある場合には仲介業者に善管注意義務違反があり仲介行為に瑕疵があったことになります。この瑕疵が顕在化して契約が取り消しあるいは解除された場合には前述の3(売買契約の成立)が欠け、4(仲介行為と売買契約の成立の相当因果関係)もなくなり媒介報酬が請求できないと考えるというのが本件の結論になります。

事例の結論としてはXの請求は通らない、理由はXの仲介行為に瑕疵があり、それが合意解除という形で解消されたことにより契約不成立と評価される(3の要件の欠如)、また仲介行為と当初の売買契約との相当因果関係がなかったと評価される(4の要件の欠如)からというのが理由になります。

 本件のような重大な調査・説明義務違反がある場合には媒介報酬が取れないのみならず契約当事者から損害賠償請求される可能性もあり、業者が契約当事者に報酬請求することが現実的ではないと思われますが、媒介行為の瑕疵と媒介報酬の関係を考える素材としてこの事例を選択したことになります。

それでは次のブログで事例3を解説して補足説明を終えたいと思います。   続く